未来へ続く笑顔の循環

外国人にも愛される観光地としての一面に加え、どこか懐かしい下町の雰囲気も合わせ持つ上野。そんな場所に佇む大衆酒場かぶら屋東上野店では、学生から年配の方、家族連れまで、日々幅広い層のお客様で賑わう。

自然と会話が弾み、笑顔が溢れる。そんなお店をつくるために意識したことは何か。そんなお店であり続けるためにやるべきこととは何か。

カギとなるのは、かぶら屋で働くスタッフ、バディの存在だという。

店舗の責任者としてお店を任されている杉田さんと店長兼オーナーというポジションに立つ安藤さんにその想いを聞いた。

2010年にオープンした東上野店は、数年前までは年配のお客様が多かったものの、最近は学生さんや家族連れなど、さまざまな層のお客様にご利用いただけるようになったと感じています。

そんな東上野店の一番とも言える特徴は、フレンドリーで、お客様との距離が近いところだと思います。

もちろん店員とお客様という立場は忘れてはいけません。しかし、その中でもお客様を巻き込み、楽しんでいただけるようなコミュニケーションは常に意識しています。

その明るい雰囲気に居心地の良さを感じてもらえているのか、お客様とお客様の距離も近く、初めて会ったお客様同士がいつの間にか楽しそうに会話している場面もよく見かけます。

目の前のバディやお客様との会話だけに集中するのではなく、周りのお客様の様子も見ながらコミュニケーションの輪を広げていく。そんなことを心がけるようになってからは自然と会話が弾み、店内がより一層笑顔の絶えない空間になったと感じています。

お客様との接点を増やしたいという目的で、東上野店ではX（旧Twitter）を活用しています。新商品のお知らせや、季節に合わせた投稿を行っていて、それを見て来てくれるお客様も少しずつ増えています。

店内ポップやメニューなどに、Xのアカウントに飛べるQRコードをつけることで、来店してくれたお客様が手軽にフォローできるように工夫もしています。

SNSの一番の強みは、あらゆるお客様に魅力や情報を届けられる点だと思います。来店頻度が低い方やかぶら屋という名前だけは知ってるような方にも、定期的にお店のことを思い出して来店してもらえる機会を作れるのは大きなメリットです。

こうしたちょっとしたきっかけから、お店のことを好きになってくれたり、また行こうと思ってくれたりする方が一人でも増えれば嬉しく思います。

人と人との距離が近い点がお店の特徴だとお伝えしましたが、それが実現できている一つの要因が「主体的に動けるバディが多い」からだと思います。

他の店舗に比べてベテランのバディの比率が高いというのもありますが、新しく入ったバディに対しても丁寧に教育を行っています。

その際に意識していることは、その人のポジティブな面に目を向けるということです。

できない部分ばかりを指摘するような教育をすると、どんな人間でも「怒られたくない」「言われたからやる」といった受動的な行動しか取れなくなってしまいます。そうではなく、得意なこと、できるようになったことを認めて、褒めることを常に意識しています。

加えて、行動の意図をしっかりと伝え、それぞれが理解しながら動くことで、結果としてお店全体にも主体的な動きが広がっていきます。これがコミュニケーションの連鎖を生み、お客様にも伝わることで、最終的にお店全体の明るい雰囲気にもつながっていくのです。

今後も長く続くお店であり続けるためには、お客様からの信頼を裏切らないという点も非常に大切です。一度のトラブルがお店の評判を大きく変えてしまうこともあるからです。

例えば、過去に牛すじの量が毎回違うという指摘をいただいたことがありました。そこで現在はしっかりグラム数を量ってから提供するようにしています。

お料理の質に関しては、バディだけで結論を出すのが難しい場合もあります。そんなときには、私がしっかりと責任を持って判断を行っています。

お料理や接客、バディの動きなど、店舗を担う人材はあらゆることに気を配らなければなりません。だからこそ、広い視野を持ち、店舗を安心して任せられる人材を増やしていくことが私の役割だとも感じています。

しかし、人材不足が深刻で、時給を上げる以外の明確な解決方法が見つかっていないのが現状です。

そこでまずは、今働いてくれているバディに対して、しっかり未来が見えるようなフォロー体制を整えていこうと思います。ここで働くことで将来に希望が持てると感じてもらえるようになれば、少しずつ人も集まってくると考えているからです。

これまで約13年間、いろんな方に支えられ受け継がれてきた東上野店をこれからも長く愛される店舗にしていけるよう、お客様はもちろん、お店に関わるすべてのバディへの感謝を忘れず、前に進んでいきたいと思っています。