Columnコラム
2023.11.24
お客様と創る新たな一歩
JR川崎駅から徒歩2〜3分。商業施設「川崎モアーズ」7Fにある屯ちん川崎店は、歴史ある質の高いラーメンとアットホームで話しやすい雰囲気が魅力でファミリー層、学生さん、外国人まで日々多くのお客様の笑顔が集う。
神奈川県で唯一のこの店舗を指揮する榊原さんは、屯ちんをもっと広めたいという想いを胸に、お店づくりを進めてきた。
10年以上の長いキャリアの中で体験したお客様とのエピソードと、今後の展望について聞いた。
川崎店の色と味
商業施設の一角に位置する川崎店は、他の屯ちんとはまた違った特色があります。その1つが外観です。透明なガラス張りになっていることから、レストラン街でお店を探しているお客様も店内の様子がうかがえるようになっています。
また、テーブル席も多く配置されており、ラーメン屋としてはかなりゆったりとした空間になっているのも大きな特徴です。カウンター席がずらっと並んでいるような、いわゆる一般的なラーメン屋とはかなり雰囲気が違うと思います。
そのため、お子様連れや買い物後で荷物が多いお客様でも安心してお食事を楽しむことが可能です。
当店のメニューで人気が高いのは、見た目も豪華な「得入りラーメン」です。2種類の食感が味わえるチャーシューやこだわりの煮玉子など、豊富なトッピングが楽しめるこのラーメンは、週末ご家族で訪れるお客様や、外国人のお客様から特に好評をいただいています。
初心を忘れるべからず
川崎店に限らず、屯ちんを訪れるお客様は常連の方の割合が非常に高いです。その理由は、歴史と伝統のある質の高いラーメンを安定して提供できているからだと感じています。
「いつ食べても同じ味」というのは実はすごく難しくて、同じ食材かつ同じ調理工程でも味が変わってしまうことがあります。
例えば、スープの味はベースとなる豚骨の僅かな違い、気温、湿度などさまざまな要因で変化します。また、麺の状態も常に一定ではないため、いつでも同じ味のラーメンを提供することは至難の技なのです。
そんな中、店舗としてラーメンの質を保つためには、マニュアルの順守が必要不可欠です。整えたマニュアルをスタッフに浸透させ、完璧に身につけてもらうことが基本となります。しかし、これだけでは不十分です。
一度やり方を覚えても、慣れてくると気が緩み、ちょっとした油断からスープや麺の僅かな変化に気付けず、結果として味が落ちてしまう可能性があるからです。
そこで、川崎店では定期的に初心に立ち返る機会を作っています。屯ちんには調理に関する試験があるのですが、新しいスタッフがその試験に挑戦するタイミングなどで、ベテランのスタッフにも自分のやり方を振り返ってもらうようにしています。
常に最高のラーメンを提供するための環境を整えること。その努力が、お客様からの厚い信頼を獲得できている大きな要因だと思います。
雰囲気作りの立役者
川崎店はファミリー層など複数人で来店されるお客様が多いため、比較的賑やかな雰囲気があります。私自身も、堅苦しくなく、お客様と気軽にコミュニケーションが取れるような明るいお店づくりを意識しています。
私が店長になりたての頃は、「こんなお店にしたい」という願望はあったものの、スタッフにどう伝えればいいか、どうやったら実現できるのかよくわかっていませんでした。
この点は時間が解決してくれました。時間をかけて店長としての経験を積んでいく中で、スタッフの信頼を得ることができ、同時に私のビジョンも彼らに浸透していったのです。
ただ、新しく入ったアルバイトスタッフは、業務への不安や緊張からコミュニケーションがうまく取れないケースが度々ありました。そこで、早く仕事に慣れてもらえるよう、勤務初日から2日目くらいまでは、基本的にマンツーマンでサポートするようにしています。
お客様もなんとなくその空気を汲み取って、優しい声かけをしてくださることも多いです。スタッフ一丸となるのはもちろん、お客様の温かな後押しも、店舗の明るい雰囲気作りの助けになっていると思っています。
積み重ねてきたもの
お客様との温かいエピソードは、実はコロナ禍にもありました。
緊急事態宣言が発令され、飲食店の営業ができなくなった時のことです。
川崎店は商業施設内にあることから、施設側からの許しが出るまで営業を再開することができず、丸々2ヶ月近く休業を余儀なくされていました。
そんな中、都内にある屯ちんが先に営業を開始することになったので、再開後の雰囲気やお客様の入りを見るためにお店を訪れることにしたのです。
特に手伝うわけではなかったため、一般のお客様に紛れるような形で行ったのですが、その時来店していた方の中に川崎店の常連さんの姿を見つけて、思わず声をかけてしまいました。
「たまたま東京に来たタイミングで、屯ちんの営業再開を知って駆けつけたんだよ」とうれしそうに話してくれたその笑顔を見た時、このブランドがいかにお客様に愛されているかということを身にしみて実感しました。
その後、都内の状況をもとに、食材の仕入れなどの準備をして迎えた再開初日。ここで予想外の喜びがありました。
「この日を待ち望んでいました!」と言わんばかりに、行列が絶えないほど多くのお客様が来てくれたのです。
2か月という長い休業だったので、不安や焦りなどもありましたが、これまで積み重ねてきたものが無駄ではなかったのだと、報われるような気持ちになりました。
伝統の味、次なる挑戦へ
歴史あるラーメン屋ということもあり、東京では「屯ちん」の名前は比較的知られているかと思います。
一方で、10年以上この店舗に関わっていて感じるのは、開店当初と比べるとお客様の数は明らかに増えてはいるものの、それでも神奈川県での知名度はまだまだ高くないということです。
「この地で屯ちんをもっと有名にしたい」
そんな想いでここまで走り続けて来ましたが、その夢に一歩近づくためにも、神奈川に新規店舗を立ち上げることを目標に掲げています。
屯ちんをもっと知ってもらい広めていくこと。これが今の私の大きなモチベーションになっています。多くの方に愛されるブランド作りのため、目の前のお客様への感謝を忘れず、これからも前に進み続けます。