Rootsわたしたちの原点
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スペシャルティコーヒーの新世界へ
プロローグ
人生を変えるような新たなコーヒーと出会える場所。
南池袋にあるCOFFEE VALLEYは、こだわり抜いたスペシャルティコーヒーを提供することで自分たちの存在を示し、地道にお客様の信頼を積み上げている。
スタッフ自らが南米をはじめ、世界各地のコーヒー農園に足を運び、自分たちの感覚で吟味をする。味わいや見た目だけでなく、生産者と直接コミュニケーションを取り、信頼を築きながらコーヒーの個性を体に染み込ませる。
そうして受け取ったバトンは、新たな魅力が加えられ、至極の一杯となって手渡される。まさにそれは、コーヒーの新世界へ飛び立つ切符のように、コーヒーが苦手な人でさえも新世界へといざなうほどだ。
そんなブランドのきっかけは1人の「コーヒーが飲めない男」からはじまる。
コーヒーに無我夢中となり、8年以上続くコーヒー専門店を創り上げるまでに至ったこだわりと秘めた想いとは何なのか。
「10年先もかっこよくありたい。」
この言葉を胸に、コーヒーと真剣に向き合い、難しいことは考えず、当たり前のことを当たり前にやり遂げることで、積み上げてきた軌跡をたどる。
一滴のこだわり
COFFEE VALLEYのコーヒーの最大の魅力は、味のバランスが非常に良いということだ。また、コーヒー本来の苦みや深みに加え、甘味や酸味を感じさせる豊富なフレーバーを取り揃えている。
直に目で見て、味を確かめた、愛着のあるコーヒー豆を使うこと。
実際、スタッフにコロンビアの農園まで足を運んでもらうこともある。逆にエチオピアの農園の生産者がお店にコーヒーを飲みに来たこともある。こうして南米という遠く離れた場所ともうまく信頼関係を構築している。
どんな人が、どんな場所で、どんな想いでつくっているのか。また、どんな淹れ方をしてどんなコーヒーが出来上がるのか。
味や香り、見た目だけでなく、音や肌触りを通して理解することで、最大限の価値を引き出した、最高の一杯に繋がる。
これはスペシャルティコーヒー専門店としてコーヒーに懸ける想いの現れでもある。
こだわりがあるだけに、立ち上げ当初はどちらかというと年配の方が多いのではないかと予想もしていたが、20代30代のサラリーマンや主婦など、若い人にも足を運んでもらえているのは嬉しい誤算だった。
コーヒーの深淵に出会う
ここに至るまでの原点ともいえるのが、1人の「コーヒーが飲めない男」の話だ。
ワーキングホリデーで訪れていたロンドン滞在中のこと。当時働いていた飲食店でたまたま口にしたエスプレッソをきっかけに、コーヒーの世界に興味を抱く。
同じ豆で同じ淹れ方をしても全く同じ味にならない。
コーヒーが飲めなかったはずなのに、こうしていつの間にか無限に広がる味わいの奥深さに引き込まれていった。
ビザが切れて日本に戻った後は、東京でコーヒー関連の仕事がしたいと飲食業界へ。
そこからはよりおいしいコーヒーを追い求め続ける毎日。
そして、最終的にはコーヒーをやっていることを知った知人の紹介で、COFFEE VALLEYの立ち上げに携わることになり、店長となった今も深遠なコーヒー探求の旅の真っ最中といったところだ。
乗り越えるべきもの
COFFEE VALLEYの立ち上げ当初、池袋にはコーヒーの有名チェーン店が多く立ち並んでいたが、スペシャルティコーヒーというジャンルは珍しかった。
厳選した豆を使った本格派のスタイルという点では他と差別化できていたので、池袋でも自分たちのコーヒーならきっとうまくいく。そう意気込んでいたが、その先は険しい道のりだった。
まず、スペシャルティコーヒー専門店という新たな存在を認知してもらうこと。
この大きな壁が目の前に立ちふさがっていた。
新たな存在だったこともあり、なかなか受け入れてもらえない。実は、立ち上げ当初はコーヒーの味に関しても賛否さまざまな意見があった。
そして一番は、「人」に関しての問題である。
価値観や考え方は人それぞれで、当然だがすべてを理解するのは難しい。とはいえ、スタッフ同士の衝突や離職など、お店として不安定な状態を見過ごすわけにはいかなかった。
プライド、挑戦
オープン以来、さまざまな問題に直面していたとき、ふとCOFFEE VALLEYにできることを思い返す。
「自分たちの一番やりたいこと、やるべきことは何か」
その答えとしてCOFFEE VALLEYが進んだ道は、コツコツと毎日を積み上げて乗り越えていくことだった。決して、奇をてらうことはしない。
コーヒーの魅力を伝えるため、当たり前のことを当たり前にやり遂げる。こうして1つひとつお客様との信頼を築き上げていった。
その間、自分たちの大切にしていたコーヒーの味は一度も変えていない。スペシャルティコーヒー専門店として絶対に譲れないプライドがあった。
一方で、コーヒー以外の部分では常に試行錯誤しながら挑戦をしている。たとえば、フードやスイーツのメニューはコーヒーとの相性は当然ながら、お客様の反応や季節ごとで変化を加えている。
そんなちょっとしたことを繰り返すことで、少しづつ霧が晴れていった。
核心に咲く
ブランドの想い
紆余曲折したなかで、コーヒーについて真剣に向き合ったからこそ気づいたこと。
それは、COFFEE VALLEYを続けてくれているスタッフは社員、アルバイトに関わらず、
みんな「コーヒー好きである」ということ。
だから学ぶ意欲も非常に高い。
この事実に気づいてから、やるべきことが明確になっていく。
COFFEE VALLEYとしても、関わってくれる「人」のためにも、チェックリストやマニュアルをしっかり作り込み、定期的に勉強会も開催。
こうして、ここで働く意味をきちんと理解してもらうことで、少しずつまとまりができていった。現在、長く働いてくれるスタッフが非常に多いことが確かな証拠だろう。
目的地と
なるために
そして8年経った最近、ようやく少しづつではあるが受け入れられ始めた実感がある。そう感じるようになった理由の1つは、珍しいコーヒー豆が売れ始めたことだ。
この事実だけで見ると小さな変化と感じるかもしれない。
だが、コーヒーの新たな魅力が広まっていくのは、スペシャルティコーヒー専門店として大きな変化である。
お店作りではコーヒーを主役にするという意味で、「シンプル」をテーマとした。店はあくまでコーヒーの引き立て役なのだ。だから余計なものは置かない。
そのアイデンティティはブランドロゴにも引き継がれている。
COFFEE VALLEYのCとVを使い、地図アプリの「ピン」をヒントにデザインされたロゴには、”みんなにとっての目的地となる場所でありたい”というシンプルな想いが込められているのだ。
10年先の姿
COFFEE VALLEYは来店してくれるお客様に、「きっかけを与えられる場所」であり続けたいというコンセプトがある。
コーヒー好きじゃない人にも、新たな気づきを与えたい。だからこそ徹底的にコーヒーにこだわり、好みが見つかるような豊富なフレーバーを取り揃える。
これまでも、これからも小さな積み重ねを続け、「ピン」となるコーヒー屋であり続けること。
何かを大きく変えていくことはしない。
「10年先もかっこよくありたい」
立ち上げ当初から大切にしている言葉だ。
1人でも多くのお客様にコーヒーの魅力に気づいてもらうため、ひたすらにコーヒーと向き合い、日々の積み重ねと挑戦が10年後のかっこいいCOFFEE VALLEYにとっての「ピン」になっていく。