Rootsわたしたちの原点
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「かぶら屋」という地域コミュニティーの起点。
プロローグ
少人数はもちろん、一人飲みが気楽にできる「かぶら屋」。
メニューは鮮度抜群の豚串、都内では珍しい黒おでん。
お一人様でもより多くの部位を楽しめるよう豚串は1本から注文できる。また、価格も80円からというのが財布にも優しい。
老若男女から好まれるメニューとあって、客層は様々だ。夕方早い時間は近所に住む年配の方が、大相撲を見ながら一杯のむ。夜は、近所に務めている20代〜60代の男女で賑わいを見せる。
幅広い層から支持されていることもあり、関東近郊に60店舗以上を展開、今後さらに出店を加速していく。
そんな「かぶら屋」には、一貫した軸がある。
売上や客単価などといったことではなく、”お客様はもちろん、働く人の笑顔も大切にする” 。そのために大事なのは、単に伝えるのではなく、しっかりと教えること。
「かぶら屋」が時間をかけてじっくりと育んできた成長の原動力のルーツと未来を紹介。
豚モツとの
出会い
かぶら屋1号店は2002年にオープンした。
当時、「屯ちん」を3店舗展開するなかで、自家製豚骨スープやチャーシュー用の鮮度の高い原料を求め、時間をかけながら卸業者との付き合いを深めていた時期。
得意先の卸業者から豚モツの存在を知らされる。買い手がつかなければ卸業者は有料で破棄しなくてはならないため、破格の値段で卸してくれるという。
なんとなく魅力的とは思いながらも、ドンと見せられた豚モツを前にして何をどうすればいいのか分からなかった。
ロースやモモ肉と違い、豚モツは下処理が品質に大きく影響する。しかし下処理には、専門的な知識が必要となる。
そんなとき、見かねた卸業者の職人が、豚モツの扱い方を一から教えてくれることとなった。
なんと、毎日新鮮なモツを池袋の店舗まで車で2時間かけて運び込み、仕込みや串打ち、焼き方にいたるまでそのすべてを惜しみなく伝授してくれたのだ。
当時、モツと言えば薄暗いガード下で一杯飲みながら男性が一人、二人でつまみに飲むスタイルが主流。フーデックスでも30代の男性をターゲットに、メニュー構成や内装を考えていた。
そして多くの試行錯誤を経て、飲み物を片手に串を持ってさっと立ち飲みして帰れるオープンな店「かぶら屋」が誕生。
結果、多くの男性に受け入れられた。また、予想に反して仕事帰りの女性の心も掴むことができた。
さらに、当時の店を切り盛りしていた店長を中心にお店の雰囲気は明るく、誰でも気軽に立ち寄れそうな店構えも追い風になる。新鮮なモツを使った料理の味は格別、価格は良心的、またたく間にかぶら屋の噂は広まり、遠方から来店があるほどにぎわいを見せていった。
お客様への
想いに立ち返る
かぶら屋は初期から多店舗展開を行っている。
2010年には順調に店舗数を増やし、1年に3~4店舗のペースで展開、およそ20店舗を運営する規模へ拡大。店舗はフランチャイズではなく、個人独立制度を採用。かぶら屋という同じブランドをかかげるお店として、オーナーにはかぶら屋のあるべき姿を理解して運営していける人に任せたい、そんな想いがあったからに他ならない。
数年後、さらにかぶら屋は出店のペースを加速。そのスピードは1年に10~15店舗程度出していた時期もあった。
現場では、店長をどんどん育成しないとならない状況になってしまう。料理方法や運営ノウハウなど技術面を伝えることは比較的簡単でも、「かぶら屋とはどんなお店なのか?」というマインドの部分が全体的に浸透しにくくなっていた。
たとえば、かぶら屋の店長という肩書を持った人材を育成しても、本当にかぶら屋が1号店のオープン以降大切にしてきた、お客様への想いを共有できているのか分からない。
マインドを伝えることの難しさを痛感した時期を経て、やはりマインドは時間をかけてこそ浸透していくもの、時間をかけなければ浸透しないのだと考えに立ち返った。
想いの研修
こうした経験をもとに、かぶら屋ではお店の想いを理解してもらい、かつスピード感をもって人材育成するためのしくみを構築。
それが今、「想いの研修」という名前で行っている初期教育である。
店長候補として入社すると、1週間に1回、13コマかけた座学がはじまる。内容はかぶら屋の事業理念やこだわり、衛生管理、店舗での人材育成の方法、発注業務といった店長業務すべて。
事業理念の部分では、お客様への想いも伝える。同じ串焼きを焼くのでも、お客様に「美味しい!」と思ってもらいたくて焼くのと、単なるオーダーとして焼くのとでは、仕上がりがちがう。初期教育では技術はもちろん、こうした想いの部分を大事に伝えていくようになった。
想いを伝えるという意味では、無事に店長になった後も、座学で学んだことが現場で活かされているか、実践できているか、かぶら屋のことを理解しているマネージャーが各店舗に行き、目で確認している。
お客様を迎える姿勢や接し方、提供している料理など。一番見ているのはかぶら屋の想いの部分。もし、実践できていなければ、座学が理解できていないということになる。
たとえば、お店の前にたばこの吸い殻が落ちていたら、それは単に掃除ができていないのではなく、かぶら屋の根本的な教えが理解できていないということ。マネージャーが各店舗をまわってチェックを行うことで、研修を単に伝える場所ではなく、きちんと「教える」場所になるように心がけている。
さらに、店長になっても継続して月に1回、専門の講師を入れて勉強会に参加。店舗を出して終わりではなく、時間をかけてこまめにお店を見て、自立自走できる形を運営側としてフォローすることを人材育成という意味でも重要視している。
また、フーデックスが多店舗展開で一番よくないケースだと考えているのが、一方通行になってしまうこと。
教える側であるマネージャーは、一方的に伝えるだけではなく、メニューや運営上のシステムなどの変更があれば、さまざまな意見を上手くまとめることも行っている。
一方、店舗が本部の言いなりになるのではなく、運営側と一緒にかぶら屋ブランドをつくる意識で、お互いに正しいことを言い合えるような関係づくりにもマネージャーは気を配っている。
お客様、働く人
の笑顔を大切に
かぶら屋では、お客様に笑顔になっていただくのはもちろん、スタッフが楽しんで働けることを大切にしている。
店舗をオープンして店長は年齢を重ねていったとしても、アルバイトで働く人は一定の年齢層。年々、世代間のギャップが生まれやすい状況になる。
しかし、世代に関係なく自分たちの考えていることを正しく相手に伝える、相手の考えを正しく理解することをそれぞれが意識するように働きかける。
それができているからこそ、かぶら屋が大切にする想いがスタッフ全体に浸透し、かぶら屋で働くことが楽しいと思ってもらえているのだと考えている。
地域への貢献
かぶら屋には、地域のさまざまな世代が訪れている。
早い時間はご近所のおじいちゃん、おばあちゃんの姿があり、メインの時間になると仕事帰りの人たちや若者で賑わう。
そんなかぶら屋というブランドは、出店を加速することでさらなる地域貢献ができるとも考えてる。
料理やお店の雰囲気は流行りに乗らないスタイルのため長く続けられ、地域の人の雇用にもつながり、近所の皆さんに愛されるお店であれば、必ず地域がもっと活性化していく。
経済的な側面だけでなく、老若男女の笑顔が行き交う地域コミュニティーの起点として、今までもこれからも成長を目指している。