Columnコラム
2023.04.25
適材適所はマニュアルに勝る
池袋駅西口を出てすぐ、学生さんから年配の方まで幅広い層に愛されて日々営業を続けているのが「丸冨水産」池袋西口店です。
毎日自分たちで仕入れる鮮度抜群の魚料理が特徴で、連日多くの人の集いの場所になっています。
魚本来のおいしさを届ける
丸冨水産では、日々店舗判断でその日お店で提供するメニューの仕入れを行います。例えば、看板商品として提供することも多い多種盛りは、季節に合わせて使う魚を変え、原価率、歩留まりの良さなど、さまざま点を考慮し仕入れを行っています。
もちろん変わらないメニューも一定数ありますが、こうした仕入れは魚だけでなく、野菜やそのほかの食材も同じであり、日々流動的な部分が多いためマニュアルをなかなか用意できないというのが1つの悩みです。
また、この時間のかかる仕入れの作業を、池袋西口店では24時間営業のため、お店の営業とともに並行して行わなければいけません。仕入れから調理に至るまで非常に膨大なスキルが求められるため、育成もすぐには行えず、まだまだ人材不足を感じているのが現状です。
見つめ直すきっかけ
コロナ禍では政府による休業要請、時短要請が相次ぎ、思うように営業ができない日々が続きました。居酒屋のメインとも言えるお酒の提供ができなくなった時は、自分たちの武器を奪い取られたような感覚で、営業しても赤字の連続、状況は決していいとは言えませんでした。お酒を提供できず、夜は早く閉めなければならない。そんな状況でも何かしらの形でお客様とのつながりを持っていなければ、お店が本当に終わってしまうと感じて営業を続けていました。
誰もがはじめて経験することだったので、誰かに相談するということもできず、途方にくれていましたが、満足に働けない期間も会社側がアルバイトの給料まで100%負担をしてくれたことには感謝しかありませんでした。不安も多かったですが、続けられた大きな理由の1つだったと思います。
営業時間も短く、お酒も提供できない状態の自分たちに何ができるかを考えた時にランチメニューに目をつけました。正直利益はほとんどありませんでしたが、赤字覚悟で格安のランチメニューを展開することにしたのです。とにかくお客様との接点を取り戻さなければいけない。その想いでやり続けた結果、そこからは少しづつですが客足も戻っていきました。
その当時の取り組みがヒントとなり、ランチメニューを見直した結果、今ではコロナ前よりランチのお客様が多くなっています。
かなり苦しい時期ではありましたが、結果としてお店やお客様について見つめ直すいい機会になったと感じています。
一人ひとりの個性を理解する
池袋西口店では10代20代の学生さんから上は40代以上の方まで幅広く働いていますが、どんな人に教える時も1つだけ意識していることがあります。それは個性をちゃんと評価してあげるということです。例えば、作業が非常に得意でも接客が少し苦手な人がいたり、反対にお客様から愛されるけど作業は少し苦手な人もいるかと思います。他にも黙々と作業するのが得意な人もいれば、みんなと力を合わせるのが得意な人、みんなをまとめるのが得意な人など、個性は人それぞれです。
もちろん最低限やってほしいことはできていることが前提ですが、評価の際にこうした個性をちゃんと見てあげるということを育成において非常に大事にしています。悪いところだけをフォーカスするのではなく、できること、できないこと、得意なこと、苦手なことまで理解することで適切な仕事を任せることができるようになると思います。
実際、このポイントを意識してからは明確なマニュアルを用意していなくてもうまく回せるようになったので、適材適所という言葉を身にしみて実感しています。教育に関するこだわりはブランドとしても大切にしている部分なので、今後も自分たちなりに正解を見つけ、営業に活かしていきたいと考えています。
伝えていく立場として
コロナで下向きになったグラフを早く上向きに戻し、次の店舗を出すことが今の目標です。
そのためには新しく店長、新しいスタッフの育成をしなければいけません。自分自身の成長ももちろんですが、店長として丸冨水産での経験をしっかり伝えていく立場でもあると思っているので、教育にも力を入れていきたいです。
コロナ禍では、辛い時も「大丈夫だよ」と励ましの声をかけてくれたお客様もいて、愛されているお店なんだと再確認することもできました。そうしたお客様は今でも変わらず来店してくれていて、お客様ではありますが、共にお店を作っている大切な存在です。そんな恵まれた環境で働けることに感謝をしつつ、次の店舗に向けて1つひとつ前に進んでいきます。